アスファルト乳剤の容量と質量の関係

 『舗装施工便覧』において、タックコートの散布量は0.3〜0.6 L/uを標準としています。実際の舗装工事の設計書においても、同様に単位面積あたりの容量で記載されています。
 一方、建設工事の積算、見積もりを行う際に、資材・労務費等の参考となる市場価格を記載した(財)建設物価調査会発行の『建設物価』によると、アスファルト乳剤は円/ton で示されており、メーカーからユーザーへ引き渡す際もこの単位で行うのが一般的です。
 乳剤製造メーカーにおいても、乳剤の出荷前後の質量を質量計で測定し、その数値をユーザーに報告しております。
 また舗装の現場において乳剤散布量の検証を行う場合も、散布量を質量で管理し、後述する乳剤の温度と密度の関係式を用いて、容積に換算されます。
 容積は質量を密度で割ることで求められますから、ある工事において使用された乳剤の質量を乳剤の密度で割れば容積が換算でき、単位面積あたりの散布量が求められます。
 しかしながら、日本のアスファルト乳剤の規格には密度の規定はありません。アスファルト乳剤は石油アスファルトと界面活性剤を含む乳化液から構成されており、どちらの成分の密度も1.0g/cm
程度です。したがって、アスファルト乳剤もこの密度を使用して、特に差し障りはないと考えます。
 場合によっては、JIS K 2249「石油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容積換算表」に基づき、質量を容積に換算するケースもあります。
 また(社)日本アスファルト乳剤協会では、市販されている代表的な乳剤4種類(PK−1、PK−3、
MK−2、MN−1)を選び、JIS K 5400とJIS K 6833に規定する比重カップ法に準拠して密度試験を行った結果を、表−1に示すとおりにまとめ、日本アスファルト乳剤協会規格(JEAAS-2006)の巻末に公開しています。
 表−1に記載されている乳剤は、使用目的、アスファルト粒子の荷電状態、蒸発残留分などが各々異なっていますが、その密度の差は非常に小さいことが判ると思います。
 このことから、便宜上、乳剤の密度を1.0g/cm
と捉え、容積と質量は同一(1kg = 1L)として良いと考えられます。